まずは、食べたものがどのように体内で消化されていくのか?という点をお伝えしていきます。
実際に口から食べたものは体内で様々な器官や消化酵素の力を借りて消化の過程をたどっていきますが、どのように消化されるかについては、主に「消化器系」の働きによるものが多いとされています。食べものが体内でどのように消化されるのかについて、流れを簡単に説明していきます。
1.口での消化
消化の始まりは口です。食べものを噛んで細かく砕くことで、消化がしやすい状態をつくります。口で細かく砕く中で、唾液に含まれる アミラーゼ という酵素が、特にデンプンを分解し始めます。
- 噛む: 食べ物を噛むことで、表面積が増えて消化酵素の働きが効率的に行うことができる。
- 唾液: 唾液中のアミラーゼがデンプンを分解し、食物の消化を助ける役割を担う。
2.食道を通る
口で噛んで細かく砕かれた食べものは、舌で押し出されて食道に送られます。食道は、*蠕動(ぜんどう)運動という波のような動きで食べ物を胃に押し込んでいきます。
*蠕動(ぜんどう)運動とは?
消化した食べ物を、腸が伸びたり縮んだりする動きを繰り返し、腸内を移動させ、体外へ排出する動きのことを指します。1秒間に1cmのスピードで食べ物を動かしています。
腸の動きは「平滑筋」と呼ばれる筋肉によって実現されており、平滑筋は、手を動かしたり、歩いたりする動作のように自分の意志を伴って動かすような動作とは異なり、自分の意志で動かすことのできない筋肉です。結果的に蠕動運動の働きは、意識をしたからといってできるような動きではなく、自分の意志では動かすことはできません。
蠕動運動をコントロールしているのは「自律神経」で、なかでも腸の働きを活発にするのは「副交感神経」と言われています。副交感神経を働かせるために、リラックス状態であるということが重要となります。
3.胃での消化
蠕動運動によって食べたものが胃に到達すると、胃酸(塩酸)や消化酵素(ペプシン)によって、胃でさらに分解が進みます。胃の内部は酸性の環境なので、食べもののタンパク質が分解されやすい状態になっています。
- 胃酸と酵素: 胃酸とペプシンは、タンパク質を分解し、食べものを液状に近い形にまで分解する。
- 胃の蠕動運動: 胃は筋肉で食べものをかき混ぜることで、より細かく分解していく。
4.小腸での消化と吸収
胃から小腸に送られた食べものは、主に小腸で栄養分が吸収されます。小腸は、十二指腸、空腸、回腸の3つの部分に分かれています。
- 十二指腸: 胃酸を中和するため、膵臓から分泌される膵液が酸を中和し、肝臓からの胆汁が脂肪の消化を助ける働きがあります。膵液中にはデンプンや脂肪、タンパク質を分解する酵素が含まれています。
- 空腸・回腸: ここで栄養素(アミノ酸、脂肪酸、糖分、ビタミン、ミネラルなど)が血液中に吸収されます。腸壁にある微絨毛(びじょうもう)が吸収面積を広げ、効率的に栄養を吸収していく。
5.吸収される主な栄養素
- 炭水化物(例: デンプン、糖分)は、消化されて単糖(ブドウ糖など)になり、小腸の壁から吸収され、血流に乗って身体の中に運ばれていく。
- タンパク質は、アミノ酸に分解され、小腸で吸収された後、血流を通じて全身の各細胞に運ばれていく。
- 脂肪は、胆汁によって分解され、脂肪酸やモノグリセリドに変わり、リンパ液を通じて吸収される。
- ビタミンやミネラルも小腸で吸収され、体内で必要な場所に運ばれていく過程をたどる。
6.吸収後
- 吸収された栄養素は、主に血液を通じて全身へ供給されていく。
- 糖分は血糖として利用され、エネルギー源として活用される。
- アミノ酸は筋肉やその他の組織で使われ、壊れてしまった組織の修復や各器官の成長に役立つ。
- 脂肪酸は細胞膜を構成したり、エネルギーとして使われる。
7.大腸での水分吸収と排泄
小腸で吸収することが出来なかった残りの食べものは、大腸に送られます。大腸では、主に水分や電解質が吸収され、残りの未消化物は便となり、最終的に肛門を通じて体外に排出される過程をたどります。
- 水分吸収: 大腸では、食べ物の残りカスから水分が再吸収され、便が固形化していく。
- 腸内細菌: 大腸内には腸内細菌が豊富に存在し、未消化の食物繊維やその他の物質を発酵させ、ガスや短鎖脂肪酸を生成している。
1~7の過程をまとめると
- 口で噛んで分解
- 食道を通って胃へ
- 胃で胃酸と酵素によって分解
- 小腸で栄養吸収
- 大腸で水分吸収と排泄
5つのプロセスを通じて、口から摂取した食べものからエネルギーと栄養素を取り入れ、体内で吸収されることのないかったものを不要なものとして体外へ排出しています。
消化機能が低下するとどのような影響があるのか?
口から入れた食べものがどのような経路をたどって吸収されていくのか?が分かったところで、次に消化機能が低下してしまうと身体にどのような影響があるのか?についてまとめていきます。
消化機能が低下してしまうと、身体には様々な影響が出ます。
口から取り入れたものの消化がうまくいかなくなってしまうと、摂取した栄養素が十分に体内に吸収されず、体調不調を引き起こす場合があります。
消化機能が低下した場合に起こる主な症状や影響について説明をしていきます。
1.栄養素の吸収不足
消化機能が低下すると、食べものが十分に分解されず、小腸で吸収される栄養素(例えば、ビタミン、ミネラル、アミノ酸、脂肪酸など)が不足することがあります。栄養素が不足することで以下のような問題が発生する可能性があります。
- エネルギー不足: 食べものからエネルギーをうまく取り込めなくなり、疲れやすくなってしまう。
- ビタミン・ミネラル不足: 栄養不足の状態が続くと、免疫力が低下したり、骨や皮膚、髪の健康に悪影響を与える可能性がある。
- 体重減少: 食べても必要な栄養が吸収されないため、体重が減少する場合もある。
2.消化不良(胃もたれ、膨満感)
消化がうまくいかなくなると、食べたものが胃や腸に長時間とどまることになり、以下のような症状が現れます。
- 胃もたれ: 食後に胃が重く感じたり、食べ過ぎたような感覚が続く。
- 膨満感: お腹が張った感覚や、ガスがたまりやすくなる場合がある。
- げっぷやお腹の痛み: 消化不良により、体内にガスがたまり、げっぷが出たり、お腹が痛くなったりする場合がある。
3.便通の問題
消化機能が低下すると、腸内での食べものの処理がうまくいかず、便通に影響が出る場合があります。
- 便秘: 消化不良や腸内環境が悪化してしまうと、便が硬くなり、排便が難しくなる場合がある。
- 下痢: 消化されなかった食べものが腸を通過し、腸内での水分吸収がうまくいかない場合に、下痢になる可能性が高まる。
4.腸内環境の悪化
消化機能の低下は、腸内フローラ(腸内細菌のバランス)にも影響を与えることがあり、腸内細菌のバランスが崩れると、以下のような問題が発生することがあります。
- 腸内ガスの増加: 腸内で未消化の食べものが発酵することによって、腸内のガスが増え、腹部膨満感を引き起こす場合がある。
- 腸内フローラの乱れ: 腸内環境が悪化すると、免疫力が低下したり、消化不良がさらに悪化する可能性がある。
5.免疫機能の低下
腸は体内で最も多くの免疫細胞を持っているため、消化機能の低下は免疫力にも影響を与える可能性があります。腸内の健康が損なわれると、免疫機能が低下し感染症やアレルギー症状が出やすくなるといった可能性が高まってしまいます。
6.慢性的な疲労感
栄養の吸収がうまくいかなくなると、必要なエネルギーを身体が十分に得られなくなり、慢性的な疲れやだるさを感じやすくなります。
7.皮膚や髪の問題
栄養不足が続くと、皮膚や髪にも影響を及ぼすことがあります。例えば、ビタミンやミネラルが足りないと肌荒れや乾燥、髪のパサつきや抜け毛が起こることがあります。
消化機能を改善する方法
上記でご紹介した消化機能の低下を予防、改善するためにオススメの方法をご紹介
- 食事内容の見直し: 脂質の摂りすぎや、糖質の摂りすぎには注意が必要です。高脂肪、高糖分の食べものを避けて、食物繊維が豊富な野菜や果物を摂るように意識をしてみましょう。
- 小分けにして食べる: 一度に大量に食べると嚙み切ることが出来ずに細かく砕かれることなく、大きい状態のまま体内へと吸収されてしまう場合があります。その結果、上手く消化されない場合があるため、少量ずつ何回かに分けて食べることで消化を助け、消化機能を維持することができます。
- 水分を十分に摂る: 体内には元々60%ほどの水分がありますが、水分量が低下してしまうことで便が硬くなってしまったりと、消化に影響を及ぼす可能性があります。水分を意識的に摂取し、消化をサポートしましょう。
- ストレス管理: ストレスが消化に悪影響を与えることがあります。交感神経が優位となり、常に興奮状態になってしまうことで、消化機能を担う臓器が常に活動している状態となり、休む時間がなくなってしまうことで消化機能が低下してしまう可能性があります。意識的にリラックスする時間を作り、消化機能を担う臓器の休息時間を確保しましょう。
- 適度な運動: 軽い運動は腸の動きを促進し、消化を助ける役割があります。一日の歩数を少し増やしてみたり、ストレッチなど簡単な運動でも腸のはたらきを改善することに繋がるため、意識的に適度な運動を実践してみましょう。
消化機能が低下した場合は、早期に対処することが重要です。上記でご紹介した症状が続いてしまう場合には、消化器系の専門医に相談することをおすすめします。
食べ過ぎてしまった後のリセット方法(食事編)
ここからは皆さんが気になっているであろう、ついつい食べ過ぎてしまった…なんていうときにリセットする方法をご紹介します!!
まずは【食事編】です!!食べ過ぎた後のリセットのための食事は、胃や腸を落ち着かせ、消化を助けるものが理想的です。軽くて消化に良い食べものを選ぶことで、体調を整えることができます。
1.おかゆ
おかゆは皆様の中でも消化吸収を助ける食事としてイメージがつきやすいのではないでしょうか?
おかゆは消化に優しく、胃に負担をかけずに栄養を取り入れることが出来ます。特に白米のおかゆがオススメです。おかゆは胃や腸に優しく、必要なエネルギーを補給することができます。
2.スープ(味噌汁、野菜スープ)
軽いスープは水分補給にもなり、消化をサポートすることも出来ます。大きな具材を沢山入れるようなスープではなく、細かく刻んだ野菜を入れたり、大根おろしなどすりおろした食材を入れた味噌汁や野菜スープなどがオススメです。胃に優しく栄養も摂れるものが適しています。
3.ヨーグルト
ヨーグルトに含まれるプロバイオティクス(乳酸菌)という成分は、腸内環境を整え、消化を助ける役割があります。最近では生きて腸まで届く乳酸菌なども話題になっていますね!砂糖が入っている加糖のヨーグルトよりも無糖のヨーグルトがオススメです。
4.おろしポン酢で食べる大根
大根は消化を助ける酵素を含んでいます。そのため、大根は食べることで胃や腸のはたらきをサポートしてくれます。大根をそのままの味で食べるだけではなく、おろしポン酢などさっぱりするような味の工夫を行うことで食べやすくなるため、オススメです。
5.バナナ
バナナは果物の中でも消化が良い食材として知られています。バナナの成分の中にはカリウムという成分が豊富に含まれているため、カリウムを補うことができます。胃や腸に優しい食材なので、リセット食事にもぴったりです。
6.野菜スティック(きゅうり、にんじん)
最近ではコンビニでもよく見かけるようになった生野菜のスティックは低カロリーで栄養素も豊富です。消化をサポートしつつ、軽い食事にもなるため食べ過ぎてしまった翌日の食事に取り入れることで消化吸収のサポートになります。
上記6つの食材を意識して、食べ過ぎた後の胃や腸を落ち着ける食事内容となるよう、食事を見直してみましょう!!
食べ過ぎてしまった後のリセット方法(運動編)
続いて食べ過ぎてしまった後のリセット方法【運動編】をご紹介します!!
食べ過ぎた後の運動は、軽めで消化を助けるものであることが理想的です。激しい運動はかえって胃に負担をかける可能性があるため、無理をせずに避けることをオススメします。無理のない軽めの運動内容をご紹介していきます。
1.ウォーキング
食後に軽くウォーキングすることで、消化を助ける働きがあります。あまりにもお腹が膨れている状態でのウォーキングは難しいかもしれませんが、満腹感がある程度落ち着いてからウォーキングを行うことで、血糖値の上昇を緩やかにすることができます。無理のない範囲で30分程度、ご自身のペースに合わせてゆっくり歩くのが理想的です。
2.ストレッチ
身体を軽く伸ばすストレッチも消化を助ける働きがあります。特に大きな筋肉である下半身や、背中周りの筋肉を伸ばすようなストレッチや、お腹周りの筋肉を伸ばすようなストレッチがオススメです。お腹周りのストレッチを行うことで、消化吸収作用のある臓器にもいい影響を与えることができます。
また、ストレッチは副交感神経を優位にする作用がありますので、胃や腸をリラックスさせる効果があります。食べ過ぎてしまったあとには胃や腸を休めるためにもストレッチを行ってみましょう。
3.ヨガ(軽めのポーズ)
ヨガのポーズもストレッチ同様に消化を助け、身体をリラックスさせる効果があります。特にヨガの中でもお腹周りを刺激するポーズがオススメです。ヨガのポーズの中でも例として挙げるとした場合には、キャット&カウポーズなど背骨を動かすような種目や、座った状態で上体をねじるようなポーズなどがオススメです。
4.深呼吸
深呼吸は運動というよりもリラックス方法のひとつですが、深呼吸を行うことで胃や腸がリラックスし、消化を促進することが出来ます。特に腹式呼吸を行うことで内臓に近い部分に位置する腹横筋や横隔膜を活動することが出来、消化機能のサポートを行うことが出来ます。ゆっくりと腹式呼吸を行い、意識的にリラックスする時間を作りましょう。
5.軽いジョギング(少し休憩をしてから)
軽いジョギングは食後すぐに行うことは避けて、少し時間が経ってから軽くジョギングすることがオススメです。食後すぐにジョギングを行うことで胃や腸の蠕動運動が活発になり、みぞおち部分の痛みを誘発してしまう可能性があります。無理をせずに消化が進んだ後に、身体を動かすことでスッキリ感を感じることができるため、軽いジョギングは実施するタイミングも注意しながら実行してみましょう。
※注意点:
- 食後すぐに激しい運動を行うと、本来の目的とは反対に消化不良や胃痛を引き起こしてしまう可能性があります。そのため、無理な運動は避け、軽い運動を選択するように注意しましょう。
- 運動を始めるタイミングとしては、食後30分〜1時間くらいがベストです。食べたあとすぐに実施するのではなく、胃や腸の状態が少し落ち着いてから運動を行うように注意しましょう。